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青春時代の公衆電話

 その昔は至る所に公衆電話がありました。駅やバスターミナルには複数台設置されていて、利用したい人が並んで自分の順番が来るのを待っていました。出先ではなくてはならない大切なものだったような気がします。

 長く通話するなら100円を、そうでなければ10円玉を握りしめて、最後の10円玉を入れたら残り通話時間3分。間違っていなければ市外への通話時間はもっと短かったと思います。あれはたしか、中学生に上がるくらいのときに(40年前)テレフォンカードが普及し始めました。500円分、1000円分のテレフォンカードをもらうと嬉しかった。

 これだけ携帯電話が普及したので、公衆電話そのものに目がいかなくなったのですが、本校の正門を出て左側30メートルほどのところに電話ボックスが設置されています。雪が積もったこの日もガラス張りの空間の中に緑色の電話機が灯されていました。

 私は毎日の通勤で電話ボックスの横を通ります。そのたびに電話にまつわる数々の出来事を想い出します。公衆電話に限ったことで言えば、大学時代の下宿に設置された電話機と下宿から50メートル先にあった電話ボックスです。

 「一年は玄関先の電話機の呼び出し音3回以内に出ること」これが下宿のルールでした。20名ほどが居住する大きな下宿で、入学式前に私を含めた1年生が全員入居した夜に、狭い6畳間に集合させられて先輩から言われた最初の言葉でもありました。1年生は5人でしたので、呼び出し音が鳴った瞬間に5名とも廊下に飛び出して電話機に走って行くようなことが毎日でした。

 下宿の電話機に先客があると、私は歩いて電話ボックスに向かいました。そこにも先客があると近辺をぶらぶら散歩して時間を潰しました。そうやって一台の電話機を利用しました。これは私に限ったことではなく、おそらくみんながそうだったと思います。

 当時お付き合いをしていた女性と時間を決めて電話機でつながることが楽しみでもありました。「22時ちょうどに電話するから」という具合に。約束はほとんどが守られましたが、その晩だけは父親らしき人が出て、何が気に入らなかったのかこっぴどく怒られた記憶もあります。すべて懐かしい想い出です。

 気になって総務省のホームページを見ると、公衆電話の設置についてこのように書かれていました。『社会生活上の安全及び戸外における最低限の通信手段を確保する観点から、公道上、公道に面した場所その他の常時利用することができる場所又は公衆が容易に出入りすることができる施設内の往来する公衆の目につきやすい場所に、市街地においては概ね1km四方に1台、それ以外の地域においては概ね2km四方に1台という基準に基づき設置される』とのことです。