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母校

 室蘭と登別の境目になる鷲別駅前通を山手に2キロほど直進していくと室蘭工業大学に突き当たる。室蘭市水元町を住所にするのだが、この界隈は学生のまちを感じさせる独特な雰囲気が漂っている。北海道大学のように利便性の良い札幌の中心部に位置しているわけではなく、室蘭の中心部(東室蘭)から4キロ離れた山間にあることから、付近は学生マンションやまだ一部残っている下宿、コンビニエンスストア1店舗、学生生協、飲食店が数軒、歩く人は学生か付近の住人のみ。ただこの一角は賑やかではないこの閑静さがいいのだ、と私は昔からそう思っている。

 卒業後一度ここを離れ、勤務の関係で再び戻って10年住んだ。たまたま妻の実家が室蘭ということから、毎年室蘭の地を踏むことができるのが嬉しい。室蘭は、私が生まれ育ったまちを捨て、自分の足で新たな一歩を踏み出した大切なまちであり、故郷に位置付けたまち。特に水元町界隈は私自身の心の拠り所としている場所である。

 卒業して32年。私は一度も欠かさず室蘭工業大学に足を運んでいる。ただここの空気を吸うためだけに。ただそれだけのために。自分が一番落ち着ける場所。原点に帰ることができる場所。そうした場所が自分の中にあることが幸せである。

 この日もやはり閑散としていた。お盆休みということもあるのだろう。キャンパス、住んでいた下宿付近をゆっくりランニングしたが、誰ひとりすれ違う人はいなかった。ただ寂しいとは思わない。これは32年前と何ら変わらない風景だから。だからいいのだ。

 大学に入学することによってお付き合いをしていた女性と別れ、気持ちを落としたまま下宿から大学までを往復していた自分。アルバイト先に向かうために利用した道路。授業が終わって真っ直ぐ向かった飲食店。中心街で時間を過ごしお金がなくて3キロ歩いた夜道。下宿に女性(妻)が訪ねてきたときの下宿住人の大騒ぎ。下宿のおばちゃん(通称)が作ってくれる大量カレー。一緒にテスト勉強をした親友の下宿。敷地内に車を駐車してフロントガラスにべったり貼り付けられた警告書。寂しい財布からCDを購入した大学生協。6畳一間の7号室。10円玉を落とし続けたサークル会館前の電話ボックス、・・・なんだろう、こうしたことが脈絡もなく頭を駆け巡る。

 生徒の皆さん、夏季休業も残りわずかとなりました。始業に向けて身体と心のバランスを整えていきましょう。