北海道美唄尚栄高等学校 全日制 総合学科
北海道美唄尚栄高等学校 全日制 総合学科
5月最後の土曜日、長男は転勤により札幌のアパートを引き払い、東京へ向かいました。妻と次男は何度か長男の部屋に入っていたようですが、私はこの日初めて部屋に入りました。すでに引越業者によって荷物は搬出され、残るいくつかの段ボール箱には衣類や調理道具が無造作に放り込まれていました。
地下鉄駅近の新築のアパートとはいえ、狭いワンルームでよくも1年半を過ごしたものだな、と思いながら部屋と駐車場を何度も行き来し、段ボール箱を車に積み込みました。最後に私は「それじゃな」と声をかけ、長男は「あぁ」と、ただそれだけ言い、挨拶だかなんだかわからない言葉を交わして私はアパートを後にしました。
転勤がないことを条件に長男は現在の会社に就職したわけですが、関東圏への事業展開に伴い白羽の矢が立ったようです。もう、子どもたちは親の手を離れ、自立してそれぞれの人生を歩んでいるわけですから、どこでどのような生活をしてもいいのですが、わずか7年の間にこんなにも出たり入ったり、行ったり来たりになった我が家のドタバタ劇的な惨状を思わずにはいられませんでした。
前にも書きましたが、令和元年を境に私は学校管理職として苫小牧で単身赴任、同時に長男が弘前大学入学で旅立ち、自宅は妻と次男だけの生活となりました。2年後に私は自宅に戻って新しい職場に通勤し、それと同時に次男が岡山大学に入学することになり、平成9年以来の妻との二人暮らしがスタートしました。さらに2年後、私の北見への異動と長男の札幌での新生活が重なりました。そして今年、私は美唄、次男が札幌に戻ってきて、再び家族が近場に揃った矢先の長男の東京行き、となったわけです。
たぶん、飛行機に搭乗する前なんだろうと思いますが、家族LINEに長男からメッセージが入りました。「色々お世話になりました またすぐ札幌に帰るし東京にもいつでもきてね」言葉で言えなくても文字なら言える・・・便利なツールです。私は「心配しないで東京生活を楽しみましょう」と打ちました。東京を仕事だけで生活して欲しくない。自分の時間としても東京を楽しんで欲しい。私の生き方のスタンスを伝えるメッセージ、として送信したつもりです。
うむ、またすぐ札幌に帰るし - すぐ?何?
長男の引越から数日後、妻が東京に向かいました。1週間後に帰ってきた妻と自宅からほど近い百合が原公園を散歩し、藤棚の真下に設置されたベンチに座って話をしていたときに「なんかね、彼女がいたんだって。私写真見せてもらったよ」と妻が教えてくれました。そういうことだったのか・・・?の答えがわかったわけです。
かなりいい距離をランニングして、あとは家まで呼吸を整えながらゆっくりジョグで。その途中の跨線橋でこの景色に出会いました。この夕焼け空の向こう側の、海を越えた数百キロ先の東京で生活している長男を思いました。今頃何をしているのだろうか、東京を楽しんでいるだろうか・・・アパート前で別れたあの日のこととLINEメッセージのことが思い浮かんできました。
(有明跨線橋からの夕焼け空)
3年次生が製作したハーバリウム(植物標本)が並べられています。光が通るとさらにきれいに見えます。どれも素晴らしい作品です。
私が教室に入ったときは、2年次生が作品づくりをしていました。ガラスのボトルにお花を入れたり出したり、持ち上げたボトルをくるくる回して眺めたり。彩りや配置を何度も確認して、気に入った形にしていく・・・ものをつくるのっていいですよね。余計なことを考えずそのことだけに集中できます。
お店の商品棚に並んでいるものの中から気に入ったものを購入する、私たちはそうしたことを繰り返しているわけですが、ちょっと調べれば意外に自分で作れてしまうものが多いです。
本校では、何でも、とまではいきませんが、各系列で工夫して様々なものづくりをしています。確かに手間はかかりますが、その分ものの大切さや工夫することの楽しさ、完成したときの感動!!を日々体感できるという、美唄尚栄ならではのおもしろい学びができます。
こんなものがあればいいな、と思うものは大抵手に入る時代です。それは確かに便利でありがたいことではありますが、本校の生徒は多くの体験的な学習を積み重ねることによって、完成したものを探すのではなく、工夫してものをつくることを考えるだろう、と私は思っています。
例えば物置の奥に、ある材料が眠っているのを思い出し、「あっ、そうだ、あれを使えばこれが作れるよな」とひらめく。「あのときあの果物でジャムをつくったから、このリンゴで今日ジャムをつくろう」となる。「布でスカートつくったことあるから、ブラウスがつくれるな」と想像を膨らませることができる。
これからの時代、こうした発想が大切になるような気がするのです。学歴だとか物事を何でも知っている、などといった他者と比較する物差しではなく、もう物差しでは測ることができない、物差しをそもそも必要としないおもしろい発想が、世の中をぐんぐん動かしていく、と私は考えています。
先日、パウンドケーキづくりの実習を見学したとき、生徒に「ケーキを焼いたりパンを焼いたりするノウハウを身に付けているのだから、美唄市内で自分のお店を出せるよね」と話をしました。お店を経営するのは簡単なことではない、そのことはわかっていますが、発想の転換でまんざら夢物語ではないような気が私はしています。誰でも起業できる。何にでも挑戦できる。もっと言えば誰でも起業していい。何にでも挑戦していい。昭和、平成の既定路線の価値観は身を潜め、今は新たな価値観に転換され続けています。
小さなコーヒーショップを持ちたい、と考えている私からすると、お菓子を作ったりパンを焼いたり、ジャムをつくったりできるスキルはどうしても必要で、そうした知恵を高校時代に身に付けている生徒が本当にうらやましいです。私も若いうちに習っておきたかった、そうした学校に通っていれば今頃・・・なんて真剣に考えるわけです。退職したらまず専門学校に入学して学ばなければならないわけですから。
発想の転換で夢や将来がどんどん広がっていく - 私が勤める学校には可能性がたくさん詰まっていると思っています。私は工業(電気)を専門とする教員ですので、長くものをつくることに取り組んできましたが、そんな私から見ても新たな発見ばかりでおもしろいです。自分の守備範囲以外のものづくりがたくさん詰まっていて興味津々です。
明日は誠に勝手ながら更新なしとさせていただきます。また来週お会いしましょう。
やっぱり見ていただきたいな、と思い、残る3作品掲載します。
(写真を加工しています)
「校長の小部屋」見てくれているといいのですが・・・特に、作品づくりをした生徒の保護者等の方には。できれば写真ではなく、学校にお越しいただき直接見て欲しいです。閲覧していましたら是非御連絡ください。生け花に限らず、校内の至る所に生徒の作品を飾っていますので、足を運んで見に来てください。
写真を見るとわかると思いますが、お花の横にあるホルダーには作者である生徒の年次と氏名が記載されています(掲載する都合上モザイク加工しています)。ちょっとしたことなのですが、これがまたいいなぁ、と思っています。クラスメイトが、仲の良い友達が、知っている先輩が、同じ中学校の後輩が・・・名前を見てまた違った見方、感じ方ができるからです。
同じ花材を与えられても、完成した作品はそれぞれです。当たり前のことですが、これが個性です。自分と似たような人がいたとしても同じ人はいない。同じ花材と書きましたが、これは間違いで同じものはありません。同じように見えても花にもそれぞれ個性があります。同じでないもの同士が組み合わされていけば、それは無限の広がりを見せるわけで、そこがおもしろいところです。それぞれだからそれがいい。
自分を認めること、他者を認めること - このふたつはそんなに難しいことではありません。自分と違って当たり前、と思う。すごく単純です。私はずいぶん前からそうした考えで生きてきましたから、いちいち悩むことや腹を立てることがなくなりました。自分はみんなと同じでなくていいし、周りの人も自分と違っていい。ただ、それがわがままにつながってはいけません。そのことで迷惑をかけることはいけません。
ストレス社会ではありますが、意外と自分自身でストレスを作って溜めてしまう - そうしたことが結構あるものです。考え方を変えていくと肩の力が抜けて、リラックスした生き方ができます。
20日(金)の朝
校長室に入って真っ先に目に留まったものがありました。テーブルの上にお花が置かれていたのです。朝から何とも言えない穏やかな気持ちになりました。華道部の3年次生の生徒が生けたお花です。月に一度、私のところに届けてくれるので、まだかまだかとその日を心待ちにしています。贅沢ですよね。
生徒が生けたお花は、生徒玄関ホール、職員玄関、職員室前にも飾られ、私が校内を歩く動線と重なることから毎日見ることができます。前にも書きましたが、校内にお花があるのはいいな、と思います。
自宅の庭で薔薇が満開になり、私は写真を撮り、妻は色とりどりの薔薇を花瓶に挿し室内でも観賞できるようにしてくれています。そこにあるだけで明るくなりますし、人の心をやさしくします。花を介しての会話も増えます。小さなお花なのにこんなにも存在感を発揮できるのはどうしてなのでしょうか。不思議です。
作品づくりをした生徒に校長室まで来ていただき、どのようなことを考えて生けたのかを聞いてみました。「今まで扱ったことのない花材もありましたが、主役のヒマワリをどのようにしたら引き立てることができるかを考えました」と遠慮がちに話してくれました。「この先あなたがお部屋に花を飾るとき、華道部で培った経験でセンスの良い生け方ができるからいいよね」と私が言うと「はい」と笑顔で答てくれました。
10分位お話ししましたが、卒業後の進路は就職を考えているようです。「あなたにふさわしい就職先が見つかるといいね」と言葉をかけさせていただきました。きれいなお花、ありがとうございました。私のデスクに置いて、毎日見させてもらいます。
主役を引き立てる - 生徒の言葉から考えさせられることがたくさんあります。教員になったときから自身の教育の柱にしているのですが、学校の主役はまさしく生徒です。生徒一人ひとりをどのように引き立てていくか・・・学校、教員は生徒が何を考え何を思っているのかをしっかり受け止める必要があります。受け止めるためには話を聞いてあげなければなりません。私の人生の方向性を大きく変えてくれた佐藤先生(中学2、3年生の時の担任)が、どうしようもない私の話を黙って聞いてくれたことを想い出します。あれがあったから今がある - 感謝しかありません。
生徒との短い会話で市外から通学しているということを知りました。毎朝学校に登校するだけで相当なエネルギーを使っているとのこと。2年間よく通ってきましたね。あと8ヶ月ありますが、元気に登校してきてください。大変なこともあるでしょうが、その先にあなたにとっての輝く未来がありますから。
素晴らしい笑顔で生徒は校長室を後にしました。
雨天のため順延となっていた「さわやか清掃」を6月16日(月)放課後に実施しました。私、正直なところ生徒玄関前に集まった生徒の多さに驚きました。20名も集まればいいところだろうな、と思っていたからです。前もってスタッフの募集をしていたのは知っていましたが、104名の生徒たちが参加してくれるとは。全校生徒の約7割が主体的に参加してくれたことに感謝します。
言うまでもなく目的があって行事を行うわけで、さわやか清掃の実施の目的は、
(1) 通学路を生徒自ら清掃することで、環境を整備し、かつ環境美化に対する理解を深める
(2) ボランティア活動に積極的に参加する姿勢を養う
(3) 清掃活動を通じて日頃お世話になっている周辺住民への感謝の気持ちを表す
となっています。参加した生徒が、地域の一員としての意識をより一層高めてくれたら嬉しいです。
美唄駅前をゴールとして、約1キロメートルの距離を生徒と話しながらゴミを拾いました。生徒と話をすると、何か自分の子供と話をしているようですごくおもしろいです。そうは言っても、実際のところ私の子供が高校生の頃、私が話しかけても「あぁ」「そう」「わかってる」「うん」「知らない」だけでした。妻とは会話をするくせに、私には1秒で終わる単語レベルの返答しかなかったです。まぁ、私も父親と会話をした記憶がほとんどないので、そんなものだと理解していましたが、生徒はどういうわけか楽しい会話をしてくれるのです。これは不思議です。
この日も自転車を趣味とする3年次生が、週末にニセコでサイクリングイベントに参加してきたことを話してくれました。折りたたんだ自転車とともに電車に乗り、途中趣味をともにする札幌の友達と合流しニセコまで。あちらこちらから集まってきた年齢の異なる自転車マニアとの交流がとてもおもしろかったようです。150万円の自転車を持って来た方もいて、大盛り上がりのイベントで満足したと話してくれました。
マラソン大会で見知らぬ人が何千何万と集まってきますが、私もそこでランニングシューズのことやタイムの話をしてわくわくします。知らない人との会話がとても楽しいのです。笑顔で語る生徒を見て、学校では決して学ぶことのできない素晴らしい経験をしているな、と思いました。今、一度しかない貴重な高校時代、その一分一秒にこのような経験を刻み込んだことは、間違いなく彼の人生を豊かにするはずです。
私は自らの高校時代に思い残していることはありませんが、受け持ったクラスの生徒たちにはいつも素敵で最高の高校時代を過ごして欲しい - そのことの実現に向けて一人ひとりと向き合ってきました。一緒になってたくさん笑い、一緒になってたくさん泣きました。一人の大人でもなく、一人の教師でもなく、同じ仲間として接した日々が懐かしく愛おしい・・・生徒からかけがえのない時間とたくさんの思い出をもらいました。教師冥利に尽きる、担任冥利に尽きる、とはまさにこのことです。
脇道に逸れました。話を戻します。
参加してくれた生徒の皆さん、ありがとう。
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